下図は、1960年代のAlfaRomeo ZAGATO SZの為に、エレコーレ・スパーダ Ercole Spadaがラフスケッチしたものである。 リアが典型的な、コーダ・トンダ Coda tonda(意味:先端は丸い)のフォーム となっている。この時代の頃まで多くあった自動車のリア・デザインであるが それは何故かと言うと、全時代に唱えられた理論では、空力的にはボディー 後端は出来る限り丸く、それこそ尾を引く様に収束される形が空力有利と 云われていた。 この理論が徹底されると、下図の様なティア・ドロップ(落涙形)となる。 AlfaRomeo 40-60HP AERODINAMICA さて、もう一度、前記のラフスケッチをよく見るとリア後端に垂直にスパッ と線が引かれている。 この時代になると、リアは切り落とした方が実は空力面で有利という見方も あり、実際にエレコーレ・スパーダは切り落としたボディーで自ら高速走行 テストしたところ、その方が最高速が上がる事が解った。 このフォームは、コーダ・トロンカCoda tronca(意味:先端を切り落とす) と云われるものである。こうして、SZ1はトンダであったが、SZ2では トロンカとなった。この事は、形はが空力機能に従ったと云える。 この時代からは、AlfaRomeoではコーダ・トロンカの形が主流となっていった。 やがて、時代は進み1980年代後半の916開発時期となる。 ティーポTipoベースにて、スパイダーとクーペを実現させるという難題が エンリコ・フミアEnrico Fumiaに課せられた。フミア自身が、 『Tipoシャーシに、スパイダーとクーペという異なる車種をデザインし それぞれが魅力的なものに仕上げるに大変苦労した』と、述べている。 単にデザインで違いを表すだけでは、難題の解決とはならない。機能の 面で全く異なるので、パッケージングも設計(デザイン)するフミアと しては、デザインと機能(機構)の調整、調和、両立で苦労する事となる。 例えば、クーペのリアシート位置は、スパイダーでは幌の格納機機能を 置かなければならない。この様に、それぞれ全く異なる機能を有する 二車である。 フミアは、スパイダーを「コーダ・トンダ」、クーペを「コーダ・ トロンカ」とすることで解決を図った。 そもそも、先代スパイダーの魅力がリアの造形にあった。1966年の スパイダージュニアSpiderJuniorに始まるコーダ・トンダを受け継ぐ事で あり、 クーぺに関してはやはり1960年代から始まり、アルフェッタAlfetta、75へ と歴代引き継がれてきたエッジシェイプを踏襲する事がAlfaRomeo魅力の 伝承であろう。 フミアは、このデザイン・ポリシーに従い、内部機能を含め全体の パッケージデザインした。 機能を形に従わせたのである