Gtv Design Homage

-4- 【 アルコと直線  Arco or StraightLine 】

    クルマのカタチというのは、曲線形と直線形を繰り返す。 繰り返すと言われており、現在は曲面多様の曲線形のボディデザインが   長く続いており、それが20年も続き、直線形の時代が訪れてこない。その  理由は、安全基準を満たす設計するとそうなってしまうと関係者がいうが  安全性優先の時代なので、その意味で時代性を反映といえるかも知れない。 デザインコンセプトは細部にも宿るといわれ、ボディ形状だけでなく、その 細部、例えばヘッドライトの形にも及ぶ。典型的な例で言うならば、    AlfaRomeo164が直線デザインであり、916は曲線デザインであり、    ヘッドライトのデザインも、四角形squareと丸目circleの違いがある。   同じデザイナーでありながら、、、 ある時、Gtv助手席鎮座のフミアFumiaに、いじわるな質問をした。   『164のヘッドライトはスクエアなのに、このGtvはサークルだ。何故か?』 すると、即答えが返ってきた、                     『 時代がそうさせた! 』と。                     いや、時代がそうさせたのではなく、フミアがそうさせたのである。    実は、1995年頃の916開発最終段階の製造設計時に、916ヘッドライト がスクエア形にするようフィアットFIATの意向があった。理由は、サークル なヘッドライトがFIAT系列では製造できなかったからである。こうして、  FIAT製造設計部よりスクエアな従来のライトユニットとする様デザイン変更 の要請があった。                           確かに、あの小さな丸目は通せる細いビーム(光束)にするのは、     プロジェクター・レンズを透過させないと得られない原理である。それには 当時は普及していなかった、プロジェクター・ヘッドライトを開発しなけれ ならない。しかし、今はFIAT傘下では、それが間に合わず出来ない。    そして、ここからフミアの本領発揮となる。               フミアの本領というのは、デザイナーとしてでなく「モデル製作、試作車開 発の責任者」としての役目である事。フミアは行動を起こした。      まず、資料を調べ当時、日産のセフィーロのヘッドライトの小さな目に注目 した。まさに注目!。                         で、国とメーカーの域を越えて、フミアはコネクションのある日本の自動車 メーカーに問合せを入れた。当時はおおらかな時代であった。そのメーカー から日産へ連携されて、やがて日本の照射電装品メーカーと連絡がとれた。 そして、おおらかな時代なので、そのメーカーからなんとヘッドライトの  サンプルが、フミアのオフィスに届いた(無償提供)。          フミアは、そのプロジェクターライトのサンプルをFIAT首脳陣に見せた。  それでも、FIATは「今から部品開発して製造開始してもラインには間に合わ ない」と取り合ってくれなかった。                   それで、フミアは更に行動して、国とメーカーの域を越えてドイツの欧州一 の某電装メーカーに折衝打診した。サンプルを見てそのドイツメーカーは、 こう言った、「日本で出来る事は、我々だって出来る」と。        日本の技術を凌駕したいプライドなのか、単なるドイツ職人気質なのかは  解らんが、とにかく開発製造に取り組んでくれた。            従って、走り出した916の初期世代(2LitterTurboタイプ)のヘッドライト にはドイツ製と銘記されている。                    この行動の事は、フミア氏と会うたびによく話題にされる。        「一週間遅れていたら、四角目で916が生産開始されてしまうとこだった」 と申す。今だから言える、かなり切迫し必死な行動であったのだろう。   もし、スクエアなヘッドライトになっていたら、916デザインは破綻して いただろう。                             フミアは頑固オジサンである。運営陣、製造部門の指示なぞ聞き入れやしない。 たかが仔細なヘッドライトの形であるが、しかしそれには、 デザインの破綻を許さないフミアの強い意志が916に宿っている。

■つづく、次章へ

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