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-2.1- 【 形は機能に従う  Form follows function 】

    エンリコ・フミアEnrico Fumiaは絶えず唱える。                 『形は機能に従う  Form follows function』                 クルマの持つ様々な機能が形になって表出されるという事である。         フミアは、生涯デザイナーであり、ピニンファリーナ在職時は、モデル製作、    試作車開発の責任者のあった。という事は、パッケージング設計の統括者で     あるので、デザインと機能の融合を図る責任者であった。             さて、前述のキャラクターラインは916にAlfaRomeoスピリッツを        与えたが、ではこのキャラクタラインは機能にも従っているのであろうか?     見る者は、このキャラクターラインの前半分は、エンジンルームの換気、熱気を   抜くためにスリット・ダクトであると言う。そうであれば、機能を有した形となる。 その前、クーペ・フィアット Coupe Fiatについて考察し見ると。そのキャラクター ラインのせいで、フミアのデザインではないかとよく間違われるが、こちらは、   クリス・バングル Chris Bangleである。それで、そのキャラクターラインは、   ボンネットを開けて見ると、、、                        この様に、そのスリットはエンジンルームの熱気抜きになってる様である。     話しを、916に戻して、ボネットを開けてみると、、、             このように、熱気を逃がす流路にはゴム製のパッキングのようなものがあり     しっかりと熱気の流れを塞ぐようになっている。つまり、スリットになっている   キャラクターラインは、機能は有しておらずデザイン目的だけであるのか?     フミアが唱える様に、機能に従ってない。                    しかし、ここで916に関してそのデザインはスパイダーが先にあった、という事を 思い出してほしい。                              スパイダーは、幌を格納しオープンにして走る。格納した幌にはカバーかフタ(蓋) をする。幌を掛けたりしまったりする際、フタは一旦開いて動作後に閉じる。フタは 可動部分でありボディーは固定部分である。両者は一体化できないので分離し、   その間に境目が生じる。                            このフタと境目の線のデザイン処理が難しい。処理が悪いと、カバーがめだって   しまったり、ボディデザインの一貫性、統一感を損なうことになる。        そこで、                                   916ではそれを巧みにデザインで解決した。キャラクターラインに幌カバーの線を 連続させて、機能をも包括したラインにした。形が機能に従った瞬間である。 Enrico Fumiaは機能とラインに関して、こう述べる。                  『ラインについては、造形物がユーザーマネージメントに対して、その        スタイルのアイデンティティを伝達する、謂わばコミュニケーション        手段ということです。その意味で、重要な機能を担ったラインであり、       単なるグラフィックス(遊び)でない。                     機能主義に徹したデザインといえるのです。デザインの持つ機能とは、       物理的なツールとしての機能(空力なども含む)は最低限必要ですが、       上記のような機能も含めてこそデザインとしての完成度が高まり、         謂わば高パフォーマンスデザインが実現するのです。       』 よく見て解るように、キャラクターラインはボディー全身を一周している。 カバー(フタ)がキャラクターラインの一部になった。 一つの円にする事によって、完全な一貫性となった。 そして、この円のなかで円周が一か所だけ曲がってるところがある。スクッド(盾、 イタリア語:scudo)がある部分。しかし、これは意図的なものである。円を曲げた 事によってスクッド目立つ存在になる。スクッドはAlfaRomeoの魂である。     完全なる図形である円をスクッドで唯我独尊特別な形にする。           AlfaRomeo魂が完全なものに勝ることができた。これこそ、デザインの哲学である。

■つづく、次章へ

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