エンリコ・フミアEnrico Fumiaは絶えず唱える。 『形は機能に従う Form follows function』 クルマの持つ様々な機能が形になって表出されるという事である。 フミアは、生涯デザイナーであり、ピニンファリーナ在職時は、モデル製作、 試作車開発の責任者のあった。という事は、パッケージング設計の統括者で あるので、デザインと機能の融合を図る責任者であった。 さて、前述のキャラクターラインは916にAlfaRomeoスピリッツを 与えたが、ではこのキャラクタラインは機能にも従っているのであろうか? 見る者は、このキャラクターラインの前半分は、エンジンルームの換気、熱気を 抜くためにスリット・ダクトであると言う。そうであれば、機能を有した形となる。その前、クーペ・フィアット Coupe Fiatについて考察し見ると。そのキャラクター ラインのせいで、フミアのデザインではないかとよく間違われるが、こちらは、 クリス・バングル Chris Bangleである。それで、そのキャラクターラインは、
ボンネットを開けて見ると、、、
この様に、そのスリットはエンジンルームの熱気抜きになってる様である。 話しを、916に戻して、ボネットを開けてみると、、、
このように、熱気を逃がす流路にはゴム製のパッキングのようなものがあり しっかりと熱気の流れを塞ぐようになっている。つまり、スリットになっている キャラクターラインは、機能は有しておらずデザイン目的だけであるのか? フミアが唱える様に、機能に従ってない。 しかし、ここで916に関してそのデザインはスパイダーが先にあった、という事を 思い出してほしい。 スパイダーは、幌を格納しオープンにして走る。格納した幌にはカバーかフタ(蓋) をする。幌を掛けたりしまったりする際、フタは一旦開いて動作後に閉じる。フタは 可動部分でありボディーは固定部分である。両者は一体化できないので分離し、 その間に境目が生じる。 このフタと境目の線のデザイン処理が難しい。処理が悪いと、カバーがめだって しまったり、ボディデザインの一貫性、統一感を損なうことになる。
そこで、 916ではそれを巧みにデザインで解決した。キャラクターラインに幌カバーの線を 連続させて、機能をも包括したラインにした。形が機能に従った瞬間である。
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Enrico Fumiaは機能とラインに関して、こう述べる。 『ラインについては、造形物がユーザーマネージメントに対して、その スタイルのアイデンティティを伝達する、謂わばコミュニケーション 手段ということです。その意味で、重要な機能を担ったラインであり、 単なるグラフィックス(遊び)でない。 機能主義に徹したデザインといえるのです。デザインの持つ機能とは、 物理的なツールとしての機能(空力なども含む)は最低限必要ですが、 上記のような機能も含めてこそデザインとしての完成度が高まり、 謂わば高パフォーマンスデザインが実現するのです。 』 よく見て解るように、キャラクターラインはボディー全身を一周している。 カバー(フタ)がキャラクターラインの一部になった。 一つの円にする事によって、完全な一貫性となった。
そして、この円のなかで円周が一か所だけ曲がってるところがある。スクッド(盾、 イタリア語:scudo)がある部分。しかし、これは意図的なものである。円を曲げた 事によってスクッド目立つ存在になる。スクッドはAlfaRomeoの魂である。 完全なる図形である円をスクッドで唯我独尊特別な形にする。 AlfaRomeo魂が完全なものに勝ることができた。これこそ、デザインの哲学である。
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