【  Y 日記 】

1999-06-11 CVT学 講義T

    それでは、世の中のCVTの蘊蓄知識でも、、、 ●ベルトなの ? CVTのフルスペルでの、よくある間違いは、Chain Velt Transmission とか、 Chain V-belt Transmission とかであり、前者なんかはテクニカル・ターム以前の 英語の問題である。 正解は、Continuously Variable Transmission であるので、 つまり、連続可変で変速出来ればCVTといえる。 多くの間違いは、ベルトを 使ったもので、原付のベルト・ドライブ変速の親分という知識の誤解である。 べつにベルトを使ってなくても、よいのであるウ。 ●押してるの ? これまたチェーンから来る誤解で、ベルトがけでエンジン動力でもって、 セカンダリー・プーリー(ドライブ・シャフト側)を引っ張ってるのではないかと いう理解である。 答えは、”ブー”である。 実は、ベルトで引っ張っている のではなくて、ベルトで押してるのである。 張力ではなくて押力でトルクを 伝達してるのである。 事実であるが、これが卓球(ピンポーン)である。 このベルトは実は、引っ張るとすぐに切れるシロモノである。 その構造は。 ものすごく超デフォルメして説明すると、、、  50円玉を糸でつないだ様な ベルトと表現しておこう。 これって、引っ張ると簡単に切れるが、重なった 50円玉列は押しても押してもつぶれはしない。 こうやって、エンジン側プーリー で圧力を与えられた押力は、約百個の重なった50円玉を通じて、 負荷側プーリーに伝わって行く。 こうして特殊金属ベルトが順に送られて、 動力が伝達される。 これを発明したのが、オランダのファンドルネ社であり、 この方式をファンドルネ式プッシュ・ベルトという。 ちなみに、上記の糸は 実際は、厚み0.1mm程度のスチール・バンドを10枚重ねて構成されている。 そして、オランダにには50円玉がないので、厚さ2mmの特殊金属片を台形に したものを使う。 これを、コマという。 しかしイー、、、 実は張力式のベルトCVTもあるのである。 これをアメリカの ボーグワーナ式CVTといい、ベルトは腕時計の金属ベルトみたいに、金属片(コマ) をピンでつないだものである。 しかし、これコマの間に隙間があるので、 連続性がなく結構にノイズが出る欠点がある。 ●ボーグ社って、サイボーグの会社? そもそも、この張力式CVTはボーグワーナ社がCVTの覇権、寡占をめざして むりやり作ったものである。 CVT以前の、通常のオートマ(トルコン+遊星ギャ)は 現状では、このボーグワーナが独占している。 日産、本田、豊田、そして松田も 昔は一生懸命にオートマにそれぞれ開発に挑んだが、ちょっと油圧制御で凝った 事をしようとすると、すぐにボーグワーナ社のパテントにひっかかるように 特許を張りめぐらせてある。 オートマを女、子供のオモチャと思って普及の 遅れていた欧州にしても同じ事情で、かくして現在は世界中のオートマは同社の 寡占状態であり、それがオートマ車が高くなる原因でもある。 ボーグワーナ社は、オートマ界の、Microsoftである。 独占が続くと技術的進歩が停滞する。 で、ここんとこ四半世紀はオートマに 関しては進歩が無い。 せいぜい豊田が頑張って、4速ATやロックアップATを 開発したが、それはボーグワーナのに付加価値したに。過ぎない。 そのうち、ファンドルネがCVTを発明したが、これを見てボーグは慌てたのだろう。 急ぎ、ベルトを開発したが、ノイズが多いので、プッシュ・ベルトに負けている。 系列の、鈴木で実用しカプチーノに装備したに過ぎない。 ●クラッチはやっぱり要るの ? いくら連続可変でも、停止と発進をつなぐ事は不可能なので、前日(1999-06-10) を読んで下さい。 ●ギャヤ比はどうなの ? プログラムで自由自在である。 ちなみに、オーバー・トップは、マニュアルの 常識の 0.8 どころか、CVTでは 0.5 にまでなっている。 ●切れるから大型車に使ってなかったの? よく、CVTが中型車に復旧してないのは、ベルトが車重、過重で切れるためと 誤解がある。 これは、ベルトに張力がかかってるという間違いから来てる。 前記したようにベルトにかかる力は押力なので、ベルト荷重が問題ではない。 押力で伝わった動力は、プーリーの2枚で挟むことで、受取っている。 つまり、ベルトを挟むプーリーの力が強くないと、押されてきたベルトが離脱 して動力が伝わらなくなってしまう。 これを、”押し付け圧”という。 だけど、この押し付け圧が強すぎると、ベルトとプーリーの摩擦が増加し 伝達効率が低下する。 最近は、日産プリメーラ等の中型にも装備されたが、それはプッシュ・ベルトの 径を大きくして対応したものである。 今後大型車への普及が予測される。 ●早く手を出したのは ? プッシュ・ベルト式においては、'85頃に既に、FIATと富士で試作が 繰返され実用化された。 FIATは当初、ファンドルネのユニットを採用していたが (Unoで実績)、PANDA以降は富士重工ユニットに独自プログラムを組み込み、 PUNTO、Y等に装備した。 また、他にはローバー100、200にもCVT車がある。 FIATは小型車の「オートマはCVTだ!」という方針があり、CVT黎明期から テストしてきた。 中型は、Seleスピードの様な方式を目指している。 いずれにしろ、ボーグワーナの覇権から独立しようとする主体性が見受けられる。 ・・・・・ このつづきは、明日 ”講義U”へ



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