【  Y 日記 】

1999-04-01  エンジンというものについて再考



    立花啓毅 マツダの開発技術者で、カペラ、RXー7、ロードスターの開発 プロジェクト・リーダーであり、『クルマとの対話』という著書がある。 この本、造る側の経験で書かれており、我々の知る事の出来ない領域で 語られている。 カタログ数値や、JAPAN Car of Yaerの選考委員のように いわゆる"車評論家族"のコマーシャリズムな見方とまったく違う次元である。 その中で、”いいエンジン”とはどんなことであろうか、ある章でこうの述べている。 ”いいエンジン”とは、粘った燃焼をする、と。 Long-Strokeでも、Short-Strokeでもいいから、ピストンの中で 一回の燃焼時間が長くじっくり燃えるのが良いと。 いくら、高出力でも燃焼時間が瞬間的であると、トルクカーブが狭く (ピーキー)になって扱い悪くなる。  そんなのは、ミッションが10段ぐらい必要になり、 レースー中はギャチェンジで忙しくなり競争どころではない。 レースでなくても、じっくり燃焼してる場合は、振動が少なくなり滑らかになる。 そして、タイヤにも好影響する。 つまり、瞬間燃焼のものは実はエンジンの 出力がタイヤに伝わって時点で小刻みにスピンしてるのである。 つまり、粘る燃焼のほうがじっくり長い時間、その出力をタイヤに与えられる。 エンジンの特性が関係無いと思ったタイヤまで影響してるなんて、 車の各部要素の相関って複雑で、だからクルマって奥が深いな。 実は、YのFIREエンジンはこれじゃないかと思い始めている。 正直なところ私は、Yのこの8バルブ型(初代FIRE設計)を期待してなかった。 FIREエンジンは2世代あり、初代はほとんどLong-Strokeで かったるい。 私は、Short-Stroke信俸者であり、Longはエンジンではないと 決めている。 本田と三菱はだから嫌い。 FIATは'80年代後半から FIREを造り始めた。 FIREのRは、ロボットのことであり、このエンジンは ロボットで組み立てられている。 ボディー組立てや塗装をロボットで 行うのは多いが、エンジンの組立まで行うのはFIATぐらいであろう。 なんせ、FIATはロボット自体も自分で設計、生産してる。 高速道路の工事 から、人工衛星まで作ってる自動車メーカなんだから。 第2世代FIREは極めてスムーズで滑らかな回転のShortであるが、 初代はいわゆる"ガサつく"エンジンである。 Yについては、CVTとの組合せがこれしかないので購入選択の余地はなかった。 以前乗ってたUnoは、F1エンジン並みの超shortで1110ccで、60psあり このFIREと出力は同じである。 Yのは1242ccもあるのに、同じ馬力とはしょーもないと思っていた。 しかし、このYのエンジンって、実は前記の”粘る”エンジンではないかと 感じ初めている。 アイドリングは、ガサつき、吹き上がりはゴソゴソ、 だからキューーンとか、クワーーーンとは来ない。 回転で走るエンジンではない。 ゆっくり回って、CVTにトルクを供給しつづけている御仕事エンジンである。 Unoに比べて働き者であるのは、フルトラとインジェクションの効果であると 思っている。 Unoは、セミトラにウェーバーキャブであった。 この新装備で、Unoと同じ馬力ながら、トルクは1割ほど高い。 低い回転域で。 それは、発電所の発動機の様に一定回転で、もくもく無表情にと回っている。 けして面白いエンジンではない。 アクセルを踏み込もうがCVTが反応するだけで エンジンは冷血に回っていて、吹き上がる事はない。 スポーティーなアクセル ワークなんて出来やしない。 CVTには好都合な相手であるが、イタ車的な 吹き上りを期待してはいけないのである。 仕事はまじめに着実にこなすが、カジュアルデーにも背広で会社に出て来て、 休みの日も遊に出ない、そんなつまんない奴ってかんじ。






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